
作词 : Junia Brutus
作曲 : Junia Brutus
もう春だと 君より先に気付いていたのは
たぶん 僕じゃなくて 窓辺の光だった
朝の匂いが 勝手に部屋へ入り込んで
君は何も言わず そこで咲いていた
鈴蘭水仙
白く 細く 凛として
水と光だけで足りる顔をして
僕の影なんて 踏みもしないで
伸ばした手は 行き場をなくして
空気の中で ほどけていった
「何かしなきゃ」と焦るほど
何もいらないと 君は証明していた
水をやる?
昨日の雨で足りてる
陽を遮る?
今日は風がやさしい
声をかける?
花は返事をしない
ねえ じゃあ僕は何?
報われたいわけじゃない
役に立ちたいわけでもない
ただ ここにいてもいい理由を
ひとつ 探していただけだ
君は 季節とだけ約束をして
きっちり守って きっちり咲いた
僕との未来なんて
最初から 予定表にない
世界は ちゃんと回っていて
春は ちゃんと来て
鈴蘭水仙は ちゃんと開く
ちゃんとしてないのは 僕だけみたいだ
光が君を選ぶたび
僕は少し 透けていく
水が土へ染みるたび
僕の声は 地面に落ちる
「いなくてもいい」って
こんなにも静かな響きなんだね
否定もされず
肯定もされず
ただ 必要とされない
それでも君はきれいだ
悔しいほど まっすぐで
強いくせに 柔らかくて
僕の感情なんて 絡みつけない
報春の名を持ちながら
誰も呼ばなくても春を告げる
鈴蘭水仙
君は君だけで完結している
僕は余白
書かれなかった一行
水にもなれず
光にもなれず
ただ 隣に立つ影
でもさ
影があるってことは
そこに光があるってことだろう
いらない存在だとしても
いらないと気付けた今日を
せめて 抱えてみようと思う
君が咲く音は聞こえない
けれど確かに そこにある
僕の役目がないこの春を
僕はちゃんと 見届ける
水も 光も
君を選ぶ
選ばれない僕は
ただ 春を見ている